ちけっとピアツーピアの解説

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本日、NEMブロックチェーンを使ったチケット管理システム「ちけっとピアツーピア」を公開しました。

これはもともとBlockChainJam2018のためにサイト埋め込み型のチケットシステムを作る目的で始まったのですが、アイデアがよさげだったので一般化しました。

これの仕組みを少し詳しく解説しておきます。

はじめに

用語として、以下の三者がいるとします。

  • ちけっとピアツーピア
  • イベント主催者
  • イベント参加者

また、前提知識として

  • ブロックチェーンのアドレスそのものをチケットとしている
  • トランザクションを受け取ったことのないアドレスであれば有効
  • トランザクションを受け取れば無効

は、プレスリリースを読んで把握しておいてください。

これだけ良く来る質問なのでここに書いておきますが、チケットとなるアドレスの秘密鍵は不要なので破棄されます。つまり、チケットとなるアドレスに送信したアセットは取り出せません。

ダッシュボード

ticket-p2p.netは、ちけっとピアツーピアのダッシュボードです。

イベント主催者は、ここでイベントの作成、定員変更をします。

定員とすでに購入された枠、そしてその円グラフが表示されます。

定員は最初0となっており、1人増やすのに50円+税をちけっとピアツーピアに利用料として支払います。

お詫び

  • JCBでエラーの報告を聞いているため、visaもしくはmasterをお使いください。
  • 支払いにPaymentRequestAPIをつかっているため、未対応のSafariでは使えません。Chrome、Edge、Operaをお使いください。

WebRTCに制限かけてたり、Firebase Authでたまにエラー吐いたり、いまだにPaymentRequestAPIに対応しないSafariはほんまに嫌いです最近。

QRスキャナ

後述するGASにて生成したQRコードをスキャンすることができます。検札のスタッフはこのQRスキャナページを開いて仕事することになりますが、このQRスキャナページは特別にログイン不要となっています。つまりアカウントをスタッフ全員に教えなくともURLを教えるだけでスタッフは対応可能です。

 

GAS

定員を購入したイベント主催者は、自身のサイトに、チケット販売機能を埋め込むことができます。API形式での利用のため、デザインも自由自在です。ダサいチケット販売ページに遷移させられることはなくなります。

以下のドキュメントにあるように、GoogleAppsScriptのテンプレートを用意しているため、サイトのフォーム機能を実装することができれば、それなりに簡単にできると思います。

ドキュメント

GAS内には、チケットとなるブロックチェーンアドレスをQR化する機能も含まれています。

また、スプレッドシートに購入者を記録するため、万が一のミスが発生した場合の対応も可能です。

メール

上述したGASにより、イベント参加者には、ブロックチェーンのアドレスのQR画像が添付されたメールが届きます。

このQRがほかの人に知られると無効化されるおそれがあるため、イベント参加者はQRを公開せずに保管します。

 

転売を防ぐインセンティブ設計

このシステムは「転売不可」というと語弊が出ます。

「転売不可」にするのであればイベント入場時に身分証明書を提示させ、チケットと紐づいた情報と照合する等の方法がとられますが、こういった照合手続きなど、支払うコストが発生します。

一方このシステムは物理的に「転売不可」なわけではありませんが、低コストで転売対策が可能という「転売対策が容易」なチケットシステムです。

このシステムは友人間の定価での転売などを防ぐものではないということです。

 


ではどのように転売対策が機能するのか、それを説明します。

前提として、

  • 転売者
  • 二次購入者

がいるとします。

1.転売者が商品の存在を秘匿するインセンティブ

当然ながらチケットは公開すると第三者に無効化されるため、転売者は有効なチケットの在庫を持っていることを証明する方法が存在しません。

転売者は、在庫を持っていることを証明できないまま転売をしなければならず、怪しさが増します。

怪しさはいいかえればリスクであり、リスク回避的な人はこの転売者から二次購入するインセンティブがなくなります。

2.転売者が通報するインセンティブ

転売者「が」通報するインセンティブです。「を」じゃないの?と思う方が多いでしょうが、これであっています。

 

転売者と二次購入者の取引が無事に終わったとしましょう。料金は転売者の手に入り、二次購入者はチケットを手にします。

この状況において、転売者が自身の販売したチケット(nemアドレス)に無効化トランザクションを送るインセンティブ両立条件は

トランザクションのコスト<通報に支払われる報酬

となります。nemはスカスカなブロックチェーンなので手数料は0.05xemと非常に安いですから、0.05xem、いまのレート(1xem10円くらい?)で換算しても0.5円です。報酬(から報酬を受け取る手続きコストを差し引いた分)が0.5円を超えていればこれは成り立ちます。

これはほとんどの状況において達成可能と考えて問題ありません。

 

つまり、転売者はセルフ通報をするインセンティブがあります。

セルフ通報をされた場合、二次購入者は高い金を払ったのにイベントに参加できないという地獄をみることになります。

このリスクをイベント主催者が周知することに努めれば、転売を抑止する効果が出るというわけです。

繰り返しゲーム

ゲーム理論では繰り返しゲームという概念があります。(これはミクロ経済学の力でもあまり触れられてなかった気がする)

一回限りの囚人のジレンマであれば、互いに協力しないことが最適戦略になりますが、繰り返しである場合、非協力は最適解でなくなります。

簡単に言えば、ながーーーーーいおつきあいを見越す場合、協力が最適戦略になりえるということです(フォーク定理という)。

これにより、転売者は長いお付き合いを見越してセルフ通報をしない、ということも考えられますが、これは転売者の主観的判断に大きく依存しており、二次購入者からすればいまだにリスクとなります。

 

3.二次購入者が通報するインセンティブ

二次購入者も当然ながら通報することができます。

通報するためのインセンティブ両立条件は

トランザクションコスト<通報に支払われる報酬<チケット販売額

となります。

トランザクションコストより大きくないといけないのは先ほど説明した通りですが、今回はチケット販売額よりも小さくないといけません。

というのも、報酬がチケット販売額より大きい場合、転売者はチケットを購入してはすぐ通報して、無限に稼げることになってしまうからです。

しかしながら、これもほとんどの状況において達成可能と考えて問題ありません。

 

ただし、この3番目のインセンティブは、Paypalのように商品に問題があった場合の振り込み差し止め機能がなければ機能しません。

たとえばPaypalで振り込みを差し止めできるのであれば、通報にかかるコストはトランザクションコストだけですが、ヤフオクのように自動で受け取り完了通知がいってしまう場合、通報にかかるコストはトランザクションコストに加えて「二次販売価格」が上乗せされてしまうからです。

まとめ

1.と2.を中心に、条件を満たせば3.も含めて転売を抑制するインセンティブが働きます。これを、ブロックチェーンによって透明性をもって活かすことを可能にしたのがちけっとピアツーピアということになります。

 

設定すべき報酬額は

トランザクションコスト<通報に支払われる報酬<チケット販売額

となりますが、個人的にはチケット販売額の1割でもあれば良いのではないかと思います。

 

このちけっとピアツーピア構想をLCNEMのメンバーに説明した時すぐにはなかなか理解されず苦しみましたが、理解してくれた時はみんなちょっとだけ感動してました!w

 

今後の課題

  • UI/UX改善
  • 通報への報酬は現在、各イベントに任せきりとなっているが、もうすこし報酬の管理などをサポートする
  • LCNEM Walletと、転売チケットを通報するのを簡単にできる連携をはかる
  • サイトのフォーム機能実装の知識を持たない人でも使えるようにするかどうか検討
  • 当然、LCNEMのメインであるステーブルコインも絡ませたい、よね!

 

おわりに

ステーブルコインを中心にブロックチェーン利用のシステム開発、コンサルティングを行っているLCNEMは、メンバーを募集中です。

  • パートタイム可
  • リモートワーク
  • 業務委託契約、雇用契約いずれも可

2日に一回ペースのパートタイムもいるので、パートタイムの頻度は気にしなくて大丈夫です。

業務内容は

  • Angular・TypeScriptを使ったフロントエンド
  • TypeScript(Firebase Functions)を使ったバックエンド
  • Go・CosmosSDKを使った独自チェーンの開発
  • UI/UXデザイナー
  • マーケティング
  • その他事務

のいずれか一つです。

LCNEMのtwitterまでDMをお送りください。

 

では。

 

10/3追記

通報とキャンセルによる払い戻しも兼ねるのであれば、キャンセル手数料を差し引いて定価の8割を返金とかでもいいかもしれない。

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