仮想通貨界隈でよくあるSCAM。要するに詐欺のことですね。
これを見抜く方法を経済学的に説明すると良いんじゃないかと思ったので、書きます。
ecobitとは
ecobitとは2017年の4月あたり、ぼくがnemに参入する前に、ICOをやっていたプロジェクトです。
スピルリナの養殖に貢献できるプロジェクトなんだそうな。。。
プロジェクト側としては詐欺のつもりはないようですが、ecobトークンは安定して値を下げ、ICOに参加したユーザーからすればSCAM同然の状態となっているそうです。
なのですが、これ、簡単に予測することができます。それを経済学的に詳しく説明したいと思います。
配当つき証券の現在価格
ecobはなんちゃってPoSを採用しており(どうやら専用ウォレットに入れないとだめなのだそうな)、一応配当つき証券とみなすことができましょう。
株なんかも同じですね。それらの価格はこう決まります。
$$ P = \frac{C}{\left(1+r\right)}+\frac{C}{\left(1+r\right)^2}+\cdots+\frac{C}{\left(1+r\right)^\infty} $$
無限等比級数の和の公式に当てはめると。
$$ P=\frac{C}{r} $$
です。
ここで、\(P\)は現在価格、\(C\)は一定期間のキャッシュフローつまり配当、\(r\)は割引率です。
割引
割引率とはなにかというと、ちょっと難しいので例を出しましょう。
1万円もらえるか、1年後に1万200円もらうかの権利をもらったとします。どっちを選びますか?分かれますよね。
いますぐ1万円もらえるかいますぐ1万200円もらうかの選択肢なら迷うひとはいないはずなのに、です。
これこそがまさに割引です。いますぐもらえないなら200円程度の価値が棄損する、という現象を表すのが「割引」です。もちろんいますぐもらえないことで何円程度棄損するかは人の主観によってことなります。なので割引率は基本的には主観です。ただ主観のままでは値が代入できないので、利子率を代入したりします。
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右辺にマイナスの項はありません。エコビーのなんちゃってPoSのおかげで正の数の配当がもらえます。ということは、エコビーにはプラスの価値がつくと直感的には思っちゃう人がいるかもしれません。「配当がもらえるんならきっと価値でるじゃん!」と。
違うんです。
もう一度この式よーくみてください
$$ P=\frac{C}{r} $$
みなさんは「エコビーには価値がある」との文を読んだとき、日本に住んでる方なら「日本円建てで」と脳内補完すると思います。「エコビーには日本円建てで価値がある」というように。なので左辺\(P\)は日本円建てで考えますよね。
ですが先ほど例を出したように、「エコビーはPoSのおかげで正の数の配当がもらえる」というところを読み「配当がもらえるんなら価値でるじゃん!」と直感的に思うということは、「エコビーの配当のエコビー建て価値(必ず正の数)÷割引率」は「エコビーの日本円建て価値」に等しいと考えてしまうのと同じです。なにがおかしいかわかりますよね?
エコビーの日本円建て現在価値=エコビーの配当のエコビー建て価値(必ず正の数)÷割引率
単位がそろっていません。
正しい計算方法
考えられる正しい式は2つあります。
- エコビーのエコビー建て現在価値=エコビーの配当のエコビー建て価値(必ず正の数)÷割引率
- エコビーの日本円建て現在価値=エコビーの配当の日本円建て価値÷割引率
の2つです。
「エコビーの数建て」で正の配当がもらえるのは事実ですが、その事実を式に当てはめたいのなら、
エコビーのエコビー建て現在価値=エコビーの配当のエコビー建て価値(必ず正の数)÷割引率
となります。ですがこれは「エコビーの価値はエコビーの価値によって決まる」というトートロジーに陥っており、なんの新しい事実も導き出しません。となると、
エコビーの日本円建て現在価値=エコビーの配当の日本円建て価値÷割引率
でエコビーの価値をはかるべきです。じゃあ、エコビーの配当の日本円の価値は?となります。
結論
エコビーに価値はありません。
以下理由。
- エコビーは「エコビーの価値はエコビーの価値によって決まる」というトートロジーに陥っている。
- ほかの資産建て評価でも価値を持つ経路をまったくもっていない。
直感でこれに気づく方は多いと思いますが、丁寧に説明してみました。
今後「独自のトークンエコノミーをつくるぜ!」という方がいたら、トートロジーに陥らないようご注意ください。