上記記事では、貨幣数量説のフィッシャーの交換方程式
$$ MV=PQ $$
より、トークンのバリュエーション(法定通貨建てのトークンのマネーサプライつまり時価総額)\(M\)は
- \(PQ\)を上げる
- \(V\)を下げる
ことによって上げることができると述べられていて、その具体的な方法として
- 利益分配の仕組みを導入する
- プロトコルに一定期間トークンをロックする機能を導入する
- バランスの取れたburnとmintをする
- 保持するインセンティブをつくる
- 価値保存になる
が挙げられています。(元ネタはChris Burniske氏っぽい。)
特に解決策2.に関して疑問がわいたので、書いてみます。
恒等式
そもそもこの式はどのように出てきたかをお伝えしておくと、これはトートロジーからくる恒等式です。
というのもまずマネーサプライ\(M\)、物価水準\(P\)、取引数\(Q\)は明らかに定義されるとして、次の\(V\)は以下のように定義されます。
$$ V=\frac{PQ}{M} $$
もう一度言います。これが\(V\)の定義です。
そして、次に以下の恒等式を用意します
$$ 1=1 $$
両辺に\(PQ\)をかけます
$$ PQ=PQ $$
これを以下に変形します
$$ M\frac{PQ}{M}=PQ $$
すなわち
$$ MV=PQ$$
これによりフィッシャーの交換方程式が導出されました。
( ^ω^)・・・
こんなんインチキじゃねえか!!!
これがトートロジーです。絶対に成り立つ恒等式をズルせず作ってます。インチキではありません。
冗談はさておき、\(V\)はこの式を成り立たせるために定義されているものだということがお分かりいただけたかと思います。
トークンロック
話をもどしましょう。Chris氏とGunosyの記事では、トークンロックの機能を導入し、流通速度を下げれば分母が小さくなることによりトークンの時価総額\(M\)が大きくなると述べています。
本当でしょうか?
この貨幣数量説の応用の試み自体はトートロジーなので絶対正しいですし、ユーティリティトークンの価格算出に応用できる可能性があったりと面白い試みであることは否定できないのですが、
\(V\)を操作するという発想が正しいかどうか怪しい
のではないでしょうか。
直感
直感的には、トークンをロックしたりして\(V\)を下げようとすると、\(Q\)が下がってしまうように思います。
また、トークン自体の効用も下がるような気もします。
あと、MV=PQはトートロジーからくる恒等式(この式が成り立つようにVが定義される)だと思うから異論はないけど、逆にこの式利用して流通速度下げようとしたとき、PQが一定のままなのかという疑問も残ってる。
流通速度下げれば効用下がるから・・・https://t.co/t9M7WbONKm— Yu Kimura (@YuKimura45z) 2018年7月14日
\(V\)は他の変数とは違い、トートロジーを形成すべく定義されたものです。
今一度、\(V\)が操作可能なものかどうか検証したほうがよいのではないでしょうか!!!