アセットの自由

Modern Monetary Theory的にいうと、貨幣とは税です。

暗号資産は、税として収めるものではないので、「貨幣」たりえない、ということを説明しました。

しかし、「貨幣」たりえないことは、悪いことなのでしょうか。いや、むしろ良いことだと思っています。

それを説明します。

納税

まず、貨幣というものは「納税するもの」です。納税しないと脱税容疑を受けるか、生活保護を受けるかの二択になります。

そのため、みんな貨幣を持ちたがります。

「脱税しないことで受けるマイナス効用を避ける」という効用があり、貨幣に需要が発生するのです。

したがって、納税対象が存在する以上、貨幣の価値がゼロになることはありません。

一方で、暗号資産には納税対象が存在せず、価値は個々の価値観(効用の感じ方)に依存します。

ここで、「ああじゃあ暗号資産ってやっぱ無価値じゃん」と感じる人もいるでしょう。そういう人はそういう価値観なのです。

しかしながら、以下のような事も言えます。

発行

重要な事実があります。

貨幣というものは、政府の意思決定次第でいくらでも発行し、薄めることができます。

暗号資産は政府の意思決定によって薄められるようなことはないのに、です。

なんでかというと、貨幣は税だからです。

中央銀行の負債

貨幣は、「中央銀行の負債」なんてものではありません。政府と中央銀行のバランスシートを統合して考えると、中央銀行が貨幣を発行すれば、まんまと通貨発行益(シニョリッジ)が入ります。

この性質は、持続可能な経済成長には必要な性質です。

冒頭に紹介した記事にも書きましたが、金本位制のように、供給量が制限された通貨ではデフレーションになり、経済は発展しません。

暗号資産が世界通貨になったとしても、金本位制の問題を再現させるだけになります。

このような問題を防ぐため、通貨は、経済成長のためにマイルドに薄め続け、マイルドにインフレさせることが正当化されるのです。※異次元緩和とは違います。

「異次元緩和」の失敗した単純な原因

政府の借金

また、国債は政府の「借金」などではありません。

本来返す必要もない自分たちの発行した貨幣を「返すよ」と宣言しているだけの残高にすぎません。

なので政府債務残高がいくら積み上がろうと、それは「いかにマイルドインフレ維持をサボってきたか」の指標にすぎません。

マイルドなインフレ維持のため、国債を発行し、通貨を発行し、薄め続けることが正当化されるのです。

価値保存権

このように政府の意思決定によって薄め続けることが正当化される「貨幣」においては、価値の保存は保証されていません。

預金はいくらでもできますが、預金したお金の一単位あたりの価値は、政府の意思決定次第で薄めることが正当化されるからです。

一方で暗号資産はどうでしょう。

納税対象がいないので価値は個々の価値観に依存しますが、プロトコルにはよるものの、いきなり薄められることはありません。

これは経済学サイドでも否定のしようがありません。

暗号資産という呼称も、「情勢に応じて政策的に薄めるもの」である「通貨」にならなくて、むしろ正解くらいに捉えられるのではないでしょうか。

アセットの自由

納税という重力が存在するため、人はどこかで必ず法定通貨を必ず使わなくてはなりません。

しかし、薄められることが正当化されるアセットを持つことを強要されるのは、経済厚生にはあまりよくないですね。

共同幻想でもいい、自分が好きだと思うアセットを使えるのが一番ベストです。

他の記事でも再三言っていますが、選択肢こそが厚生を高めます。

極論いってしまうと、経済学とは「何事にも、選択肢が多いほど好きなの選べるからみんなハッピーだよ」というのを、選好という観測事実から効用を定義して壮大なトートロジー理論をつくりあげているにすぎません。

ここで、思ったこと。

法定通貨でも暗号資産でもなんでもいいから、自分の好きな資産を好きなときに使える世の中が一番経済厚生高いんではないかと。

今まででは、例えばビットコイン決済をしたいとなると、ビットコイン決済を受け付けている店でしかできませんでした。が。

ビットコイン好きな人はビットコインを、Ether好きな人はEtherを、XEM好きな人はXEMを、または法定通貨でも、なんでもいいから支払う。

そこで即時に、店側の受け取りたい好きな暗号資産でも、または法定通貨に、なんでもいいから即時に変換される。

店側はそれを受け取る。

そんな感じが一番厚生高いんじゃないでしょうか。

FTPL、MMTは経済学のなかで今まで少数派、傍流でしたが、まもなく主流派にも浸透してくるでしょう。

現在主流派の経済理論には、貨幣が存在しないのですから(マジで貨幣の定義なしに経済モデル組み立ててる)。FTPL、MMTは実質金利の決定付近にまだ穴がある理論でそのまま使うには危険ですが、一部取り入れるだけならDSGEモデルより有用です。

そんな中、アセットの自由も、考えられてもいいと思いますし、弊社のステーブルコインも、そういうのの橋渡しかなにかに役に立つと良いなとも思いました。