ステーブルコインとアジア通貨危機

  • 2019.02.18
  • DLT
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こんな言説聞いたことありませんか?

ステーブルコインはペッグが外れるというのはアジア通貨危機のように歴史が証明している

Pegging problems
By definition, pegging creates an artificial economic environment that cannot be sustained in the wider unconstrained market over a long period. Past examples of fiat currency pegging prove that while it may act as a short-term solution, the inevitable unpegging creates serious instability.

Stablecoins: A Lesson in Market Predictions | Ripple

はい、大間違いです。

それについて説明します。

IOU

IOUとは、I owe youの省略語であり、「借用証書」を意味します。

「法定通貨担保型」に分類されるステーブルコインも、これにあたります。

例えばAさんがBさんから10000円借りたとします。Aさんは10000円返すという借用証書を、Bさんに渡すことになりますね。

ではそこで、BさんがCさんに借用証書を売った場合を考えましょう。

すると、「AさんはCさんに10000円返す」という関係性に変わります。

つまり、Cさんは「Aさんから10000円もらう権利をBさんから買う」ということをするわけです。

ではここでクエスチョン。

Cさんは何円で「Aさんから10000円もらう権利」をBさんから買いますか?

そりゃ、「だいたい10000円」ですよねえ?笑

10000円より安いなら、BさんはCさんへの販売に応じません。Aさんから返してもらったほうが得するからです。

10000円より高いなら、CさんはBさんから買いません。買っても損するだけだからです。

IOUでは、このような市場メカニズムで「ペッグ」されているようになります。

債務を履行される見込みがある限り、市場に介入などする必要もありません。

為替介入方式

え~、国際金融的な文脈での「固定相場」「ペッグ制」は、為替介入により行われます。

IOU方式ではありません。

政府や中央銀行などが金利調節や為替介入を行い、経済的に関係の深い大国の通貨との為替レートを維持する仕組みをペッグ制と呼ぶ。 ペッグ制の中で、実質的な基軸通貨である米ドルと連動させる場合を特にドルペッグ制とよぶ。

ドルペッグ制 – Wikipedia

仕組みを説明しましょう。

え~、後ほど説明するアジア通貨危機にならって、タイ・バーツとアメリカ・ドルで考えましょう。

タイの中央銀行は、「1バーツを0.03ドルにペッグする」と決めたとします。

はい、ここで市場が1バーツを0.03ドルで売買してくれれば、中央銀行はなにもすることはありません。

しかし、アメリカのFRBが利上げをして、ドル高になったとしましょう。

ドル高ということは1ドル買うのに必要なバーツが多くなるということですから、「1バーツは0.02ドルくらい」になる圧力がかかります。

変動相場制の場合、圧力がそのまま価格に反映され、1バーツは0.02ドルくらいとかになるようになります。

一方、ここでの例のように国際金融的な文脈でのペッグ(固定相場)制を宣言しているタイの中央銀行は、為替介入を行います。

ここではドル高に対抗する「ドル売り介入」ですね。

市場が「1バーツ0.02ドルくらいだろ」と思っている中で、中央銀行は「1バーツ0.03ドルのレートでバーツを買ってあげるわ」というわけです。

中央銀行は、大負けしてくれるわけです。

このように、為替介入方式は文字通り「介入」を必要とします。

放置プレーでおkなIOU方式とは、根本的に違うのです。

アジア通貨危機

放置プレーでおkなIOUと違い、為替介入には介入が必要です。

先程の説明のように、「中央銀行が大負けしたレートで取引に参加する(=市場に介入する)」ことで行われます。

「大負け」とここでは何回も言っていますが、本当に大負けです。タイの中央銀行は、勝手にアメリカドルを新規発行することはできませんからね。

ということはですよつまり、中央銀行のドルの残高にも限界があります。レートをまけてあげるにも、限界があるのです。

IOUとは違い、国内に流通するタイバーツ全てに対応する米ドルを保持しておくわけではなく、介入分だけ持っておくので、限界がでてきてしまいます。

あまりにドル売り介入しすぎて、ドルが枯渇してこれ以上介入できないよーとなると、どうなるでしょうか。

それこそが、まさにアジア通貨危機なのです。

1995年以降、アメリカ合衆国の長期景気回復による経常収支赤字下の経済政策として「強いドル政策」が採用され、アメリカ合衆国ドルが高めに推移するようになった。これに連動する形で、アジア各国の通貨が上昇(増価)し、その結果アジア諸国の輸出は伸び悩む展開となった。これらの国々に資本を投じていた投資家らは、経済成長の持続可能性に疑問を抱くようになった。
そこに目をつけたのが、欧米のヘッジファンドである。ヘッジファンドは、アジアの経済状況と為替レートの評価にズレが生じ、結果として自国通貨が過大評価され始めていると考えた。そこで過大評価された通貨に空売りを仕掛け、安くなったところで買い戻せば利益が出る。1992年にイギリスで起こしたポンド危機と同じ構図である。
殆どの国家でドルペッグ制が採られていたため、ヘッジファンドは売り崩せれば巨額の利益を得られる一方で、例え失敗したとしても、アジア諸国の為替レートが上昇していくため、損を被るという可能性は低く、この非対称性が、大規模な通貨への売り仕掛けを呼ぶこととなった。
かくしてヘッジファンドが通貨の空売りを仕掛け、買い支える事が出来ないアジア各国の為替レートは、変動相場制を導入せざるを得ない状況に追い込まれ、通貨価格が急激に下落した。

アジア通貨危機 – Wikipedia

為替介入とは市場原理に対する逆行でもあり、絶対に失敗しないようにすることは確かに不可能です。

というのも、100%成功させるには、市場のすべての情報を把握し、レートを完全に予測してドル準備高を持っておかなければなりません。

しかし、市場のすべての情報を把握することが不可能であるということは、社会主義の壮大な実験によりわかっているからです。

デマ言説

では「アジア通貨危機のような歴史に従えばステーブルコインはうまくいかない」などといった言説はどこがおかしいのか。

それはシンプルに、「IOU方式でやるステーブルコインに対し、為替介入への批判を行っている」ということに尽きます。

ストローマン論法というやつです。

デマなのか頭の整理が追いついてないだけなのかわかりませんが間違いです。一蹴。

(法定通貨担保型ではないステーブルコインなら当てはまりますよ)

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