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なぜデフレはダメなのか、そして解決策

たとえばモノの需要が低迷し供給過多だったとする。すると、まず短期においては価格が低下し、需要が上がることで需給の均衡が達成される。

次に長期において、供給が元々の需要に合わさて調整される。需要と価格は元通りになり、元の水準から供給だけが変化している。

需要不足は①短期においてデフレを生じさせ、②長期において物価元通りになるようなインフレを生じさせる。

このプロセスにおける①の期間では、需要を伸ばすような製品開発の努力は行われる(これが生産性改善の努力と誤解されることが多々ある)が、全要素生産性を伸ばすインセンティブは弱い。「供給不足を解消するために全要素生産性を上昇させる努力をする」というインセンティブがないからである。従って、デフレは全要素生産性の伸び率を低下させる。

したがって①の期間は「全要素生産性成長率の低い無駄な空白の期間」であり、いかにこの空白の期間を産まずに、絶えず全要素生産性を成長させていくかが豊かになるための鍵となる。

ワルラスの法則(全ての交換媒体の超過需要を全て足し合わせると、ゼロになる)を使えば、貨幣の需要超過は、財市場の需要不足つまりデフレとなって表れる。財A,Bしかない単純な世界を想定すると、Aの超過需要(Bを手放してAをほしいというAの需要ーAを手放してBをほしいというAの供給)と、Bの超過需要(Aを手放してBをほしいというBの需要ーBを手放してAをほしいというBの供給)を足すと、ゼロになることは容易にわかるだろう。デフレの原因は財市場の需要不足なのか貨幣現象なのかといった議論には全く意味がなく、これらは表裏一体の同一事象である。

したがって、恒常的に、ほんの僅かな貨幣市場の供給超過を維持し続けることで、財市場の需要超過が維持され、全要素生産性を伸ばすインセンティブを保ち続けることができる。

メニューコスト(正負によらずインフレ率の絶対値が大きい時)も加味すれば、極めて小さい正のインフレ率の維持が、社会厚生を高める。

問題は、ほんの僅かな貨幣市場の超過供給を維持し続けることはできるか、ということに集約される。貨幣超過需要(デフレ)になってもいけないし、急激な超過供給(ハイパーインフレ)になってもいけない。

答えは、恒常的財政政策によって可能だが、裁量的財政政策・裁量的金融政策では不可能、である。

まず、マネタリーベースとマネーサプライの区別をつける必要がある。貨幣市場における貨幣供給に該当するのはマネーサプライのほうである。

リフレーション政策でマネタリーベースは増やしたが、その因果関係としてマネーサプライが増えたかというと増えていない。これは実証済み。これが日銀理論=内生的貨幣供給理論。

ようするに民間銀行にとっては、貸出先がない(審査を通過させられないことも含む)ときは現金が余るが、利子収入を産まない現金を持ち続けるよりも国債を持っていたほうが良い。なので国債を日銀に引き受けてもらって現金を与えられ、「これを貸し出しに使ってね」と言われても、貸し出し先が見つからない限りまた国債を買うしかないのである。なので国債の需要が絶えず、国債の需要超過供給不足が発生しており、その結果としてのゼロ(もしくはマイナス)金利である。

したがって国債の供給を増やすことでしか、マネーサプライを増やすことはできない。日本のマネーサプライと金利を見ることで、これをやってきたのか、これと逆のことをやってきたのかがはっきりわかるだろう。答えは、マネーサプライも増えてないし金利もゼロ(もしくはマイナス)に張り付いてるのだから、そんなことやってきてなかった、である。

最後に、国債を供給し続けると国債が暴落し、中央銀行が国債を引き受けざるを得なくなり、結果としてハイパーインフレが起こるのではないか、ということが問題になってくる。

答えとしては、裁量的財政政策を乱発すると危険性があるかもしれないが、恒常的財政政策であればその心配はない。

まず、事前に日銀が国債を保有しておけば、その国債は無利子負債に化けることを理解しておく必要がある。日銀への利払いは国庫納付金として帰ってくるからである。これで債務が雪だるま式に増えていく心配はない。

次に、貨幣価値の源泉(貨幣需要)はどこからきているのかということを考える必要がある。答えは、課された納税義務つまり租税債務を履行するための手段としての価値があるのである。中央銀行はいまや金のようななんらかの実物を担保に中央銀行券を発行しているのではない。お金は支払いに使えるから価値があるというのは誤りで、というのもこれはお金の価値を所与として支払いを行っているにすぎないからである。

貨幣需要を一定に保ちながら、貨幣供給を微増させていくという行為は、ハイパーインフレ(物価水準の発散)の要因である

  • 貨幣需要が無になる
  • 貨幣供給が指数関数的に増加する

のどちらも起こらない。

日本のように国債発行額を減らしているわけではなくても、増税を行えば貨幣需要が増加するため物価が下がるのである。

つまり”積極財政”,”緊縮財政”を政府債務の動向だけで論じることは不可能で、結局はインフレ率の動向で見るしか無い。

ケインズは裁量的財政政策を主張してきたが、裁量的財政政策は時間的非整合性(タイムラグ)の問題もある。フリードマンやミンスキーはこれを批判してきた。

フリードマンは恒常的金融政策を主張してきたが、日銀理論=内生的貨幣供給論はこれに示唆を与える。恒常的財政政策が解となる。

裁量的財政政策の主張は小さな政府論とは相容れないが、恒常的財政政策は小さな政府論とも共存可能である。 恒常的に政府債務を出すのは政府支出の増加によるものである必要はなく、減税でも可能だからである。