物価水準の貨幣理論の解説

物価水準の貨幣理論の解説

昨日発表した物価水準の貨幣理論(Monetary Theory of the Price Level)を解説します。

統合政府

物価水準の財政理論(FTPL)に倣い、MTPLでも「政府の予算制約」ではなく「統合政府の予算制約」をみます。

統合政府とはなんなのかというと、「政府」と「中央銀行」をあわせたものだと思ってもらえればOKです。

企業の財務を測るときって、みんな連結決算でみますよね?

だから政府の債務の持続可能性は、政府の実質子会社である中央銀行の債務も含めて、一緒にまとめてみてみようというわけです。

FTPLはこれを数式ベースでモデル化しています。MTPLはそれを踏襲したわけですね。

ここで確認しておきたいのは、「中央銀行券」ようするにお金は、「中央銀行の債務」であり、「国債」は「政府の債務」であるということです。

で、中央銀行券は中央銀行の債務なのですが、中央銀行券はなにかへの貸し出しをすることによって発行されます。発行して即消費に使うというやり方はしません。

貸し出しをするということは、その貸し出しの利子を中央銀行は得られるというわけです。

中央銀行は利子収入があるので、利子収入も統合政府の収入になります。その分も考慮に入れるというわけです。

これを考慮するとなにがいいかというと、

政府債務が積み上がると、増税をして返さないといけない、そうでなければ貨幣増発で返すことになるのでハイパーインフレがおこる

という言説をよく聞きますが、このハイパーインフレがどのようにしておこるのかをもう少し具体的にできるということですね。なぜかというと貨幣の増発が政府の予算制約式の中に考慮されるようになるからです。いままでの経済学の予算制約式には貨幣増発を考慮した部分がないので、増税をして返さなければ「ハイパーインフレが起こる」←この括弧の中が説明できないのですね。

このように統合政府を考えることによって、FTPLは「政府債務は増税をして返さないとインフレが起こる」ことの説明をつけたわけですね。

しかしながらFTPLには問題があります。

FTPL においては、たとえ貨幣がなくても物価水準が決定されるので、貨幣の役割がない点が含意される。

FTPL(Fiscal Theory of Price Level)を巡る 論点について

FTPL が主張するように、政府の予算制約が均衡式として成立することから物価水準が決定されるということは、すなわち家計の予算制約式から物価水準が決定されると主張していることに等しい。換言すれば、FTPL とは HTPL(Household Theory of Price Level) に他ならない(Buiter, 2002)。

FTPL(Fiscal Theory of Price Level)を巡る 論点について

そもそも自国通貨建て債務を発行しているのは、政府だけでなく、家計・企業もそうである。なぜ、 政府の予算制約式のみが物価水準を決定すると考えるのか。なぜ、FTPL であって、HTPL や TTPL(Toyota Theory of Price Level)でないのか。

FTPL(Fiscal Theory of Price Level)を巡る 論点について

FTPLはいわゆる貨幣なき経済理論であるため、家計やトヨタの予算制約だって物価水準を決めるのではないのか?といった疑問が発生するわけです。

そこでMTPLはFTPLに現代貨幣理論を組み込み、貨幣ある経済理論にしています。ここがまず新規性です。

現代貨幣理論はいろんな主張をしていますが、重要な二点を抽出し、数式モデル化しました。それが内生的貨幣供給理論と租税貨幣論です。

MMTは数式モデルベースでの議論がなされておらず、これらの数式モデル化も新規性ある部分と言えるでしょう。

内生的貨幣供給理論

まず外生的貨幣供給理論を説明しますと、これは「貨幣供給量を決めるとそれに応じて利子率が決まる」と考えるものです。

内生的貨幣供給理論はこの逆で、「利子率を決めるとそれに応じて貨幣供給が決まる」と考えます。

利子率をどうやって決めるかと言うと、国債の市場流通量を操作し、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を操作し、利子率を動かすことで決めます。

内生的貨幣供給理論はべつにMMT特有のものではありませんが、MMTにおいて重要なウェイトを占めているので、これを貨幣供給のモデルに使います。

租税貨幣論

租税貨幣論は記事を書きました。

貨幣の交換価値を説明するのは「信用貨幣論」で十分ですが、貨幣の使用価値を説明するには、「商品貨幣論」では不換紙幣には効きません。これはただの紙切れなので紙切れ事態に価値はないはずです。

そこで、税金の支払いにつかわないといけないということが貨幣の使用価値であるとするのが租税貨幣論であり、MMTの重要なウェイトを占めます。

これを貨幣需要のモデルに使います。

FTPL,MMTと何が違うか

FTPLとは、ハイパーインフレになる条件が異なっています。

MMTとは、利子率の適切な水準が異なっています。MMTは利子率はゼロでもなんでもいいと言っていますが、MTPLでは利子率はゼロにしてはいけないという結論が出ます。

MTPLの良いところは、

  • MMTの一部を数式化して説得力向上
  • FTPLでは説明がつかないことが説明できる
  • 流動性の罠やクラウディングアウトなど既存の概念とすべて整合的である
  • 数学的に複数均衡がありえないので扱いやすい

という感じです。メリットだらけ。

政策的含意

こちらの記事にまとめましたのでご覧ください。

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